大判例

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東京高等裁判所 昭和24年(ネ)759号 判決

控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、控訴代理人において、昭和二十三年法律第百一号民事訴訟用印紙法及び商事非訟事件印紙法の一部を改正する法律(以下、改正法律と略称する)は本訴提起の日である昭和二十三年八月五日には、いまだ施行されていなかつたのである。すなわち、右改正法律が官報によつて公布されたのは同年七月二十日であり、同法附則によると、同法は公布の後三十日を経過した日から施行する旨定められているから右公布の後いまだ三十日を経過していない右八月五日には施行されないことが明かである。仮りに、同年七月六日に公布されたものとしても、期間の初日は算入すべきでないから、右法律は同年八月六日から施行されることとなると述べた外、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。

<立証省略>

三、理  由

よつて、本訴が適法であるかどうかについて判断する。

およそ、法令の公布はその法令の制定されたことを一般国民に一様に知らしめることに在るのであるから、法令の公布があつたとするには、少くとも法令を一般国民の知り得べき状態に置かなければならないことはいうまでもない。旧憲法下においては公式令(第十二條)で、法令の公布は官報をもつてこれをすることに定められていたが、右公式令は新憲法施行と同時に廃止され、しかも、その後法令公布に関する特別の規定が設けられていない現在においては、法令の公布の性質、目的に照し、相当と認められる方法によるべきものであると解する。從つて新憲法下においても法令の公布は從前どおり官報に登載してこれをするということが最も適当な方法であり、また事実において、新憲法施行後もなお、この方法を採られていることは公知の事実である。そこで官報をもつて法令が公布された場合には、その公布は何時あつたものと解すべきか、というに法令は国民全般に一様に知らしめねばならないとする観点から考えると、結局、法令の登載された官報が、所定の手続の下に印刷され、その官報を一般的に頒布するための発送手続が完了した時をもつて公布があつたものとしなければならない。右は官報の日附の日によつて左右されるものではない。

本件についてこれを見るに、昭和二十三年法律第百一号民事訴訟用印紙法及び商事非訟事件印紙法の一部を改正する法律が昭和二十三年七月六日附官報号外をもつて公布されたことは公知の事実であり、また、同法律は公布の後三十日を経過した日から施行されるものであることは同法附則において定められているところである。しかるに、当審証人佐藤辰次郎の証言によると、印刷庁は右昭和二十三年七月六日附官報号外に登載すべきものとして右改正法律の公布文の印刷を命ぜられたが印刷庁においては事務上の都合でその印刷は同月二十日午後八時五十分頃開始され、翌二十一日午前四時過頃に完了し、同日午前中に一般頒布のため所定の手続で、各地方官報販賣所宛発送されたものであることが認められるから、同改正法律の公布は、冒頭における説明によつて明かなように、右官報号外の発送手続の完了した時すなわち、昭和二十三年七月二十一日午前中であつて、その日附の日である同月六日でないものと断ぜざるを得ない。

はたして、以上のようだとすると、右改正法律は右公布の後三十日を経過した日から施行されることとなるのであるが、本件記録によると、控訴人が本訴を提起したのは同年八月五日であつて、同日は、いまだ右改正法律は施行期に達していないことは、算数上明白であるから、本件訴状には民事訴訟用印紙法の右改正前の規定に從つて算出した金額の印紙を貼用すれば足りるものといわなければならない。本訴の訴訟物の價額は金四万三千七百七十五円であるから、控訴人が右價額につき、右改正前の規定に從つて算出した金額を本訴状に貼用したのは相当である。

しかるに、原審は右改正法律の公布は、右官報号外の日附の日であるから、右本訴提起の日には右改正法律は同法附則に定められている施行期に達しているとの見解の下に、控訴人に対し右改正法律に從つて算出した金額の印紙を貼用すべきであるとして、不足額の追貼を命じたところ應じなかつたので本訴を不適法だとして訴却下の判決を言渡したのは不当で本件控訴は理由があるから民事訴訟法第三百八十六條第三百八十八條によつて主文のとおり判決する。

(裁判官 箕田正一 小堀保 藤江忠二郎)

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